初恋〜5秒間だけ
 暫くすると部長だった西宮先輩はじめ、数人の先輩達がやってきた。

「おーい。皆老けたなぁ……」

 部長だった西宮先輩が、皆を見て戯けて笑った。

「そう言う先輩の方が、もっと老けてません?」

 ドワッと皆で大笑いする。

 西宮先輩は私の初恋の人だった……。
 シャイな私は、自分の気持ちを伝える事も出来ず、他の女子に紛れてバレンタインのチョコレートを渡すのがやっと。それも、本命チョコですだなんて、とても言えなくて、何のメッセージも付けずに義理チョコぶって、惚けて渡していた。

 だから、西宮先輩は私が好意を持っていた事なんて、全く知らない。

 暫くの間話しに花が咲き、やがて、皆で何処かへ行こうかと言う話しになり、皆で携帯を片手にお店検索、ああだこうだと盛り上がる。

 その時さりげなく、西宮先輩が私の隣にやって来た。

「紗理奈ちゃん、凄く綺麗になったね」

「先輩……」

「そんなに綺麗になったら、きっと彼氏がいるんだろうなぁ……」

 少し火照ったような照れ顔で、微笑みながらポツリと言う西宮先輩。あの時もカッコ良かったけれど、更に素敵になったなぁと思う。私は「ええ……まあ」と曖昧に答えた。

「私ね、あの頃先輩の事いいなぁって思ってたんですよ」

「えっ……?!」

 酷く驚いたような表情をしながら、ゆらゆら揺れるロウソクの炎のように、先輩の瞳は潤んで、心が揺らめいて翻弄されている雰囲気だった。
 
 暫くの間沈黙する二人……。

「なあ……。キスしようか?!」

「えっ?!」

 皆の目を盗むようにしながら、西宮先輩が早技でふわりと私の唇を盗んだ。それは、ほんの一瞬の事。

 ほんの5秒間二人の時間があの頃に戻ったような、そんな一瞬だった……。

 《Fin》
  
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