囚われの歌姫
ぎゅうっ、と抱きついてくる。
人前で!
「眼鏡っ、眼鏡がズレるからっ! てか離せっ!」
「いや、梨亜ひとりで辿り着けるか心配したんだからな? あの梨亜ならすでに体育館入ってるんじゃないかって」
――ギクッ
…………あながちその予想は間違ってはいない。
「だっ、だったら付いてくれば良かったでしょ」
離せと目で訴えると珍しく溜め息を吐いて、颯人が離れた。
「……だってさ、あの女達が……」
それだけ言って、チラリと後ろを見た。
私も気になって視線を辿る、と。