妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「何言ってる。さっきから言ってるだろ。お前はヒトと変わらない。私が想うように、お前も私を想っている。同じ感情があるんだ。こうやって、私の世話も焼けるし、私としか接吻したくないという気持ちもある。まるっきりヒトじゃないか。モノには、そんな感情はないよ。少なくとも、こうやって人型でいるお前は、生きてるよ」

 きゅ、と抱きついてくる呉羽に、そはや丸は茫然とした。
 そして、ふ、と身体の力を抜く。

「・・・・・・お前も烏丸も、単純だな」

 でも、と笑みを浮かべ、そはや丸は、そっと呉羽を抱きしめた。

「お前がそう思ってくれるのなら、それでいいさ」

 呉羽や烏丸の言うとおり、確かに己は、ただのモノではない。
 呉羽と出会う前は、意思はあったが人型を取ることはなかった。
 感情が、なかったのだ。

 纏う妖気が揺れる程度で、今のようにいろいろ考えることもなかった。
 人型になり、ヒトとして生活しているのは、呉羽とあるからだ。
 呉羽といるから、ヒトと同じ『感情』が芽生えたのだ。

 おそらく、呉羽がいなくなったら、また刀に戻るだろう。
 そして、人型を取ることもなくなろう。
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