妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 そうこうしているうちに、車は蓮台野付近に着いたようだ。
 早く去りたげな従者(ずさ)たちに礼を述べ、呉羽を抱えたそはや丸が車から降りると、来るときとは打って変わって、牛車はあっという間に見えなくなった。

「へ。腰抜けめ」

 牛車の去った後に吐き捨て、そはや丸は、さっさと屋敷に向かって歩き出す。
 真夜中で灯りもないので、呉羽には周りはさっぱり見えないが、そはや丸は確かな足取りで進んでいく。
 そういや前にもこんなことあったな、と思い、呉羽は少し笑った。

 屋敷に着くと、そはや丸はとりあえず板の間に呉羽を下ろした。
 少し考え、厨に行って湯を沸かす。

 そして呉羽の傍に戻ってくると、後ろから彼女を支えつつ、着物を脱がす。
 烏丸が、呉羽の懐から、ばさ、と飛び出した。

「・・・・・・血みどろだな。洗い流したいが、きついだろうなぁ」

 夏であれば、このまま川に連れて行って洗ってやれるが、今は生憎真冬だ。

「おい烏丸。お前、頑張って床を延べろ」

「ええええっ」

 普通の烏よりは大きいとはいえ、烏丸は怪鳥ではない。
 人型でもないので、床などそう簡単に延べられない。
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