攫って奪って、忘れさせて。
彼が後輩の女の子を抱き抱えるように支えていたからだ。

後輩は飲み過ぎて気分が悪くなり、彼がそれに付き添ったらしい。

何で彼なの?
他の人でもいいでしょ?

そんな思いが私の心を埋め尽くす。

だけど次の瞬間、後輩と視線が絡んで息を呑んだ。

だってその瞳は私を嘲笑っているように見えたから。

酔ってるなんて嘘だ。最初から彼に介抱させるつもりで酔ったふりをしていたんだ。

ソファーに座らせた後輩から離れるつもりがなさそうな彼を、私はもう見ていることができなかった。

だから彼と入れ替わるように私はこの部屋を出た。
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