曼珠沙華


沈みかけた夕日が
秋空を赤く染め


校庭を歩く
女の子の背中を照らし
長い影が伸びる


”日高 紫乃”


安島の幼馴染
赤い曼珠沙華の中
手を引かれ
微笑んでいた少女


日高の他に
誰の姿もなく


体育館の方から
ボールの音と
バッシュの音が
響いている


夕日を背に
立ち止まった日高が
体育館を眺め


一瞬 頬を伝う涙を
指先で拭い


顔を上げ
また 歩き出した


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