若葉町物語


安藤さんは支えていた腕の力をゆるめると、私を元の体勢に戻した。


黄先生が痛み止めのボトルを持って病室から出ると、少し離れた場所にあった車イスをベットの横につけて、


「車イス、乗るよ」


やった。やっと自由になれる〜♪


ベットの横にある車イスを見ると、右半分の所に板が固されていて、ギプスの足───右足をおけるようになっていた。


安藤さんは私の右足を持ち上げると、


「ゆっくりでいいから動いて」


と、私をうながす。


私は両手で、自分の上半身を支えると、少しずつ左へ、左へとずれる。


久しぶりに体重をかけた左足は、不思議なくらい元気だった。


そのお陰で、車イスにスムーズに乗ることができた。


ありがとよ、我が左足…。


「自由に動いていいわよ。ベットに戻りたくなったらまた呼んで」


「は〜い」


やべっ。思わず気の抜けた声が。


安藤さんに左足の靴を履かせてもらうと病室を出た。

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