あの頃のように
「……」


鏡の中の沙稀の視線が、返答に困って助けを求めるようにさまよった。


「ちょっとおざなりだったよ。

もっとやさしくすればよかった」

「……」


頬を赤らめてうつむく沙稀を、いっそう抱きしめる。


(何をやってるんだ)


家に帰ったら、2年前のことを問い詰めようと思っていたのに。

沙稀を目の前にすると、これだ。



(自分の部屋に女の子がいて、目の前でこんな格好をしていて、これ以外にどうしろと?)


バカだな俺は。

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