あの頃のように
ドライヤーの音が止むと。

予告なく洗面所のドアをサッと開ける。


「きゃあっ」


悲鳴をあげて振り返った沙稀は、バスタオルを巻いただけの姿でドライヤーを片手に持っていた。

俺だとわかると、バスタオルの胸元をさりげなく押さえつつ、大きく息を吐く。


「……びっくりした」

「ごめん」


謝りついでに、後ろから肩越しに抱きしめた。

腕越しに、沙稀が少し体を固くしたのが伝わる。


洗いたての髪からほんのりといい香りがした。


「潤也……さん?」


「昨夜はごめんな」

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