あの頃のように
「その中に山下さんっていう人がいて――NALの個人株主だったんだけど、パパの大学の後輩だったの。

その人が中心になって情報を集めてみよう、ってことになってね。

パパは入院してたし、あたしももともと民政党に不信感持ってたから、何か力になれればって山下さんに言った。

そしたら山下さんが、“前島には大学生の息子がいるらしい、年の近い沙稀ちゃんが友達にでもなれば、何か情報が得られるかもしれない”って」

「……」

「同じ大学の学生のフリでもしたらいいんじゃない? って」

「…………」

「みんなこういうことには素人だったし、手探りでもやれることから手をつけるしかなかった」

「……なるほどね」


俺はどこかうわの空でつぶやいた。


「……それで、ユカなんて偽名を?」

「……うん。

山下さんが、あたしは苗字が珍しいから、潤也さんに近づくときは念のため偽名を使えって」

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