Hurly-Burly 5 【完】
***
said:彩乃
ずっと諦めつかなかった恋に終止符を打つのは、
案外あっさりしていたのかもしれない。
クルミも日和ちゃんも紗友梨も背中を押して
送り出してくれたんだからしっかりしなきゃ。
当分、恋はしたくないけど生まれて初めて
のことが多かったこの恋は特別だった。
「ごめんなさい、もう会うのは今日で最後にします。」
本当に好きでしょうがなかった。
今思うとどうしてこんな人好きになったんだろう?
それでも、あたし苦しい思いだけなんかじゃなかった。
時には、楽しいこともあったんだよ。
「いきなり、どうしたの?急に会いたいって言って
来て話がそれって納得いかないな。」
「身勝手なことを言ってごめんなさい。だけど、
このまま関係を続けることは出来ません。
ずっと、そう思っていたから今日最後にしたいんです。」
「俺、何か嫌な思いさせてた?」
「ううん、でも、奥さんを大事にしてあげて下さい。」
あたしの知ってる貴方は奥さん想いの人だった。
そんな貴方だから好きになったんだと思う。
「彩乃、俺は・・・・好きだよ。」
今更、そんな言葉を吐くなんてズルい。
一度も言われたことなんてなかった。
手を繋いでもキスしても抱き合っても、
欲しかったその言葉は一度も囁いてくれなかった。
甘い恋なんてものじゃなかった。
「さようなら、あたしも好きでした。」
「待ってくれよ。」
そうやって、引き止めたりしないでよ。
振り払えないんだからやめて。
「あんたさ、往生際悪いんじゃないの?」
誰も居ないはずのコンビニ近くの広場に、
コンビニ袋を提げて肉まんを齧る男の子が
腕を取ってくれた。
「あ、ありがとう・・・・」
「ヒヨリンの友達だったよな?」
手を引いて広場を駆けた。
後ろが少し気になって振り返ろうとした。