Hurly-Burly 5 【完】

ジリジリと距離を縮められている気がする。

あたしも一歩ずつ後ずさりしてなるべく距離を開ける。

「どうして、あの場所に居たの?

あんな酷いことが出来たの?」

あの血だらけの海を何度思い出しただろうか。

その度、無念で何も出来なかった自分を悔いる。

「酷いねえ?あんたの知ってる黒宮たちもそれなりに

同じようなことしてるのにそんなこと言えるんだ?」

オレンジ色の髪をかき分ける仕草を見つめる。

「同じなんかじゃない。無闇に人を傷つける

ようなことをみんながするわけないわ!

馬鹿にするのも大概にしなさい。」

侮辱は絶対に許さんぞ!!

「へえー、世間知らずってのは本当だ。」

「貴方、一々癇に障る言い方しないでくれないかしら?」

※はっきり物を言える性格であります。

「へえー、気が強いってのも知ってるよ。」

「だ、誰がそんなことを!!」

やっぱり、あたしは誰かに見られてる?

キョロキョロ辺りを見渡しても壁しか見えない。

しまった、このままでは追い詰められてしまうではないか!

それを狙ってこんな狭いところに押し込んだのね。

ならば、あたしも常日頃の用意周到な兄ちゃんに

敬意を評して鞄から例のブツをすかさず手に掴んだ。

両手は塞がってるからこれしかない。

仕留められるかあたしの腕にかかってるようだ。

馨君、ナル君、練習通りに成し遂げて見せます!!

あたしの勇姿をどうか願っててね。

「ところで、あんたさ誰の」

ドバーンっと引き金を引いたことによって爆音がなる。

に、兄ちゃん、どうしたっ!?

こんな機能はこの間までついてなかったじゃないか。

どこまでも心配性な兄を持ったらこうなるのか。

しかし、馬鹿でかい音が鳴ったぞ。

今の人気の居ないこの場所でも周りに音が確実に渡ったはずだ。

網にまんまと引っかかった運の悪い男を見てプッと鼻で笑ってやった。

「あんたのこと侮ってたわ。」

そりゃ、どうーもだ。

生憎、あたしには正義のヒーローは居ないのだ。

だから、あたしが自分でなってやるのだ。

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