Hurly-Burly 5 【完】

相手に不足はなかったはずだ。

「あんたさ、少し俺を甘く見てない?」

いつの間にか絡まってた網が解けてしまって、

自由になった手に拳を握るのを見て一瞬怯んだ。

もしかしたら、この人もあの血の海を作った人

かもしれないと思うとサッと血の気が引いた。

殴られるそう思ったのにいつまで経っても

何もされてないのを薄目を開いて確認した。

そこには見慣れた背中があって男の拳を握る

逞しくも冷静ボーイ修平君が居た。

「あんた、誰?」

しゅ、修平君がキレる!?

口調がすでに少し怒ってるような感じだ。

良いタイミングで来てくれたぞと後で

お礼を言わねばと思ってると修平君の

華麗な右キックが相手の腹に決まった。

さすが、永瀬道場の師範の息子!!

今のは絶対に痛いに決まってる。

呻き声も出さずに耐えた相手の男に、

更なる技をかけようとする修平君に、

男はよろめくこともなく去った。

「ごめん、遅かった?」

残されたあたしと修平君は顔を見合わせた。

「いいえ、ナイスタイミングでカッコイイ蹴りでしたよ。」

あれは、女の子なら誰しもが目を輝かすかっこよさだった。

「怖くなかった?」

「えへへ、油断してしまって・・・駄目ですねあたし。」

正直に言ってしまうと怖かった。

少し俺のこと甘く見てないって言われた時の瞳が

ゾクゾクするような鋭さを持っていて言葉に表せない

ほどの何かに押しつぶされるような気さえした。

「大丈夫・・・・誰が来ても手出しさせないから。」

修平君、かっこよすぎるよ!

これでは、また人気上がっちゃうんではないかね?

手を差し出してくれた修平君の手を握り返した。

「ほんの少しだけ殴られるかもしれないと思いました。」

「ほら、怖かったんじゃないの?」

だけどね、100%の確証はなかったの。

本気で殴るならもっと殺意が込められてたはずだ。

今のは、あたしを試そうとしてたんだと何故かそう思った。

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