Hurly-Burly 5 【完】
そして、いつも殴られていた。
俺には一度も手をあげたことがない親父は
憂さを晴らすかのようにその日から兄貴を殴り続けた。
兄貴が俺を庇ってくれるのを見て何度も泣いた。
もうやめてくれって俺の兄ちゃん殴るなよって
言いたくても恐怖で言えなかった。
誰か助けてくれよって兄ちゃん死んじゃうよって
痣が増えていく兄貴を見てるしか出来なくて悔しかった。
昔から俺が苛められそうになったり、嫌なこと
あったら真っ先に駆けつけて返り討ちにしてくれる
戦隊レンジャーも夢じゃないヒーローだった。
だから、泣くなよって慰められるたびに俺が
強ければ親父に嫌だと言えれば兄貴はこんなに
傷だらけになることはなかった。
「ほら、もしかしたら病気なのかもしれないだろ?」
「病気になったらあんなになるのか?」
「知らねぇけど、今だけだから成は何も心配しなくていい。」
「でも、俺のせいで・・・・・」
「これは、成を守った勲章だ。」
「勲章って何だよ?」
「知らねぇよ、自分で調べろ。」
「知らないのにくんしょうって言ったのか?」
「いいんだよ、俺は特権があるからな。」
「とっけんってなんだよ?」
正直、兄貴は馬鹿だったと思う。
頭がいい訳じゃないのに何故か頭が良いやつ
の言うことを真似ていた。
そんな日が続いても母さんは気づかなかった。
兄貴が言うには母さんは鈍感ってものだって言ってた。
「母さん、鈍感で天然らしい。」
「どんかんとてんねんって何だ?」
「知らねぇよ、辞書引けよ。」
「じしょって何だよ?」
「分かんねぇよ、辞書っていう土地かなんかじゃね?」
「とちってなん」
「知らねえってば。」
俺も決して頭が良いわけじゃない。
だから、兄貴の言葉の意味を学校の
先生に聞いたりしたこともあった。
先生は決まって笑ってたような気がする。
兄弟よく似てるって口癖に言ってた。