Hurly-Burly 5 【完】
一瞬、幻かと思って瞬きを高速で始動させた。
「オマエ、何してんだ?」
「えっ!?あ、学校見学終わった後に人と会う
約束してたからそのちょっくら行って」
言葉を続けようにも驚きで言葉を失った。
嘘吐いてるってバレた!?
あわわっと慌てふためくあたしを他所に慶詩が、
掴んだあたしの手首はしっかりと握り締められてて
その手を二度見ならぬ3度見して高速で瞬きする。
あたしの視線に気付いた慶詩がバッと手を離した。
「馬子にも衣裳だな。」
「馬子の被り物してないよ。」
「ちげーよ、んな格好あんましてこねぇだろ。」
「へ、変だった!?」
どっか、ミスポイントあるのかもしれない。
みんな洒落っ気あるからあたしよりセンスあるもんな。
もしかしたら、あたしの服にケチつけようとしてんのかと
思うと今日1日変な格好してたじゃんかと顔を青くした。
誰も言ってくれなかったけどさ、ちょっと気付いてるなら
誰か言ってくれてもいいんじゃないのかね!
「や、変ではねぇよ、つーか、オメエは見た目は
悪くねぇからな。中身はヤベーけどな。」
一言余計なんだよお前さんはよと思いながら、
黄昏た空の下しんみりしてた雰囲気を一瞬に変えた
慶詩のお散歩乱入は居心地が良かった。
1人で何してるんだねって思ってたけど、手に持った
買い物袋を見て何か買った帰り道なのかと推察した。
何か話してる慶詩の声が心地よくて聞いてるつもりだけど、
話が頭の中に入ってこない。
「おいっ、話聞いてっか?」
その呼びかけすら気付かなかったあたしはぼんやりしたままで、
「オマエ、大丈夫か?」
パシッと手首を再度掴まれたことに身体をビクッと揺らした。
「まさか、ここで妄想入れてくんなよ。」
「オマエ、まさか目開けたまま寝てんのか!?」
「おいっ、シカトかいい度胸してんじゃねか。」
なんて声を掛けられていくのに言葉が出ない。
それどころか、慶詩に心配されてることに明日は
大雪でも降るんじゃないかとさえ思った。