Hurly-Burly 5 【完】
意識を取り戻してようやく口を開いた。
「あはっ、お花畑の世界にトリップしてた。」
いつもどおりのオチを言うと慶詩にだろうなって
顔されて良かった気にしてないと思った。
「慶詩、マンションもうすぐ着くよ。」
「んあ、そうだなー」
伸びた語尾にガサガサ制服に擦れる買い物袋が聞こえた。
「因みに今日の夕飯は何ですかね?」
しかし、男のくせによく出来たヤツだなと思った。
毎日とは言わないが、基本暇な時は作ってるって
言ってたから今日も夕飯作るのかなと思い浮かべた。
「何だよ、飯食ってくか?」
「いや、そういうつもりはないよ。今日は、
帰らないといけないのよさ。」
「ふ~ん」
小石を蹴り飛ばした慶詩に危ないではないかと
文句を言おうとした瞬間やっぱり慶詩の視線が
あたしを捉えてて掴まれた手首に殴られんのかと
密かに反撃の準備を構えようとした。
「オマエ、何かあったか?」
意味が分からないような普段じゃちっともありえない
ような慶詩の声色は微かに優しさを含んでた。
「何かって何よ?」
あたしって、分かりやすい性格なのかと内心思いながらも
絶対に言うもんかと心に強く抱いた。
「ん、何か変だオメェ」
「ど、どこが!?」
そんなの分かるまいと言ってやろうかとさえ思った。
「違うなら気のせいかもな。」
あっさりした返答に脱力した。
今、バレるわけにはどうしてもいかない。
まだ、決して後継者になったわけじゃない。
一ノ瀬の後継者になるのだって本当はまだ決定事項ではない。
本来なら、一ノ瀬の後継者は男がならなきゃならない。
どういう了見でそうなったのか分からないが、昔から
血筋の中でという項目と男である項目が必須だったって
のは前に大和さんから聞かされたことがある。
そんなの大きく間違ってると思う。
一ノ瀬が大きな権力を持った家柄であることを可笑しいとか
言ってるんではなくてそういう考え方が根本的に古臭くて
壊していかなきゃいけないと思ったのもあたしが後継者になろうと
思った要因の一つである。
しかし、問題を今起こせばその権利を失うだろう。