Hurly-Burly 5 【完】

今、降りたら何にもならない。

ここまで、考えてきた年月が無駄になる。

あの秘書を殴ってやることも一ノ瀬って家柄を内から

変えてやるってことも成し遂げてないあたしにはやっぱり

明日は重要な1日であることに変わりはない。

「ふんっ、あたしはあたしだ。変なところなど

あるわけないだろうよ!」

いつもの調子を取り戻したあたしに慶詩はやっぱりどこか

納得しない顔をしたままマンションの下まで来てた。

「じゃあ、あばよっ!」

片手を上げて夕日に向かって歩こうとした瞬間、

本日何度目か分からない手首を掴まれて立ち止まった。

「あばよじゃねーだろうが。」

「アディオス!」

「でもねえんだよ。」

何この男何がしたいんだ!?

もしや、あたしの手首折りたいのか!!

そりゃ、困ったぜ!参ったぜ!

「おい、笑ってみろよ。」

大丈夫か頭打ったのかって聞こうと思ったら、

「何か、あったんじゃねーのか?」

こんな時に人の心配をするしつこい男だ。

前にもしつこく何かあったら言えやとか言ってたなとふと思い出した。

普段から笑わないあたしに難題を突きつけるなとか、

痛いよ手首折れるよとか言葉にならなかった。

「早く言えよな。俺はそんな気長に待ってやれねぇ。」

あんた、短気じゃないかと思った。

何を待ってるんだとは言えなかった。

「慶っ」

「行くな、帰んな、馬鹿が」

「馬鹿ってあんたには言われたかないよ。」

大きな手が頭の上にぶっきらぼうに置かれた。

叩くんじゃないのか!!って言おうとしたけど、

手先が器用な慶詩はどうも優しさには不器用らしい。

「オマエは変な妄想してろ。」

「失礼なんだが!あたしの妄想にケチつける気か!?」

ガシガシって感じに頭を撫でられるというよりは、

乱暴にかき乱されるって表現をした方がいいような

気もする手は少しだけあたしに勇気を与えてくれた。

何も言えないけどありがとうって気持ちを持った。

行くなって言葉には動揺したけど、このままパーティー

に行くことを揺らがす言葉だったけど決意は固かった。

あたしはよっぽど頑固な性格なのかもしれない。

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