Hurly-Burly 5 【完】
兄ちゃんはあれは俺の兄ちゃんだからなと笑った。
「兄ちゃ」
「ひーちゃん、頑張ーれ、きっとひーちゃんなら出来る。」
反対してるくせにあたしの応援はしてくれる。
反対してるなら応援しちゃ駄目じゃんかって言いたかった。
でも、どんな時でも味方で居てくれるのは昔からだった。
「緊張した時は周りを全員ナメクジだと思えば大丈夫だ!」
「何で、ナメクジ!?」
野菜に例えるならまだしもナメクジどこから来た!?
やっぱり、思考はまだまだボンバーしてる。
「えっ、これで兄ちゃん今まで乗り切ってる!」
「マジか!今までの授賞式とかも全部ナメクジで乗り越えたのか!?」
すげーぞ我が兄!そんなこととは知らなかった!
あたしも吃驚の必殺技だ。
今度、お兄ちゃんにも聞いてみようとは思う。
「ひーちゃん、帰ってきたら夜中でもラーメン食べに行こう。」
「うん!餃子も食べるぞ。」
「好きなもの食べていいからな。頑張ったご褒美に行こうな。」
「へへっ、いっぱい食べるからな。」
そう言って笑うと兄ちゃんが地面に降ろしてくれた。
早く帰ってきたいなと思った。
折角、休みにしてくれたんだから帰ったら兄ちゃんに
付き合ってあげようと思う。
階段を上がってくる足音が聞こえて兄ちゃんと一緒に
そっちに視線を向けると大和さんが迎えに来た。
「とてもお綺麗ですよ、日和様。今日は、1日私が
エスコートさせて頂きますね?」
お世辞上手いよ!山田くん、座布団一枚と言いたくなった。
「大和、ひーちゃんをしっかりエスコートするんだぞ!
変な虫がつかないようにしろよ。」
「だから、兄ちゃん気にしすぎだ。」
「もちろん、日和様を邪魔する者は排除させて頂きます。」
恐れ入ったぜ、YAMATO!
排除とは一体何事ですか!?
「では、行きますか?」
兄ちゃんから大和さんへと手を動かした。
そっと大和さんに手を掛けるとやっぱり落ち着いた。
スーツ姿の大和さんはまさに完璧すぎる。
そのかっこよさあたしに分けろなんて思いながらも、
どこまでも完璧なエスコートをしてくれる大和さんにドキドキした。
パーティー会場まではいつもどおり他愛ない会話を続けた。