Hurly-Burly 5 【完】

本当のことを言うと昨日の夜はずっと考えてた。

思い浮かべては消える四季さんの姿を窓辺で

月明かりが照らし出す夜に何度も繰り返した。

それは、多分2年前の春のあたしの誕生日に

四季さんが居なくなったからだ。

また同じ季節がやってきて寂しく思ってしまったからだ。

会いたくなるのは無性に思い出すからだ。

夢にも見るから余計に会いたくてしょうがなくなる。

ずっと考えてるせいでよく眠れなかった。

だから、せめて声だけでも聴きたいって窓に呟いて、

月を見つめることしか出来なかった。

四季さんがどこに居るかも分からないし、もちろん連絡先

も何も知らないからどうすることも出来ない。

もう明日なんだよって言いたかった。

あたし頑張るから頑張れって言ってなんて甘ったれたこと思ってた。

大概、あたしは心底四季さんに甘えてばっかりなんだと思う。

そんなんだから四季さんは呆れて居なくなったのかもしれない。

「ひーちゃん、嫌だったら嫌だって言っていいんだよ?」

兄ちゃんの言葉にグッと堪えた。

「ううん、言わない。」

「頑固だなー」

一度決めたことは簡単に諦めたりしない。

「頑固な妹で悪かったな!」

「悪くないよ、自慢の妹だからなひーちゃん」

屈託ない笑みを浮かべる兄ちゃんは絶対に責めない。

あたしの気持ちを汲み取ってくれてる。

こんな奇行を繰り返す兄ではあるが、人の気持ちには

敏感でそれは自分も経験したことならなお更なのかもしれない。

「もし、嫌になってもどうにかしてやるからな。」

「兄ちゃんこそ、頑固じゃんか。」

「だって、ひーちゃんの兄貴だもん。」

こんな時に、兄ちゃんが兄ちゃんで良かったって思える。

あたしに勇気を与える言葉を自然と出す兄ちゃんは何年も

あたしの兄ちゃんをやってるだけある。

「ひーちゃんのやりたいようにやってくればいいからな。」

大概、あたしを甘やかすのは四季さんだけではない。

「お兄ちゃんも昨日そんなこと言ってた。」

やっぱり、お兄ちゃんも兄ちゃんも兄弟で意思疎通してる

んじゃないかと思えるようなシンクロに笑えた。

反対はしてるらしいけど、あくまでもあたしに任せてくれる。

だからこそ、やり遂げたいって強く思う。

この件で一皮むけた女になってやろうと企んでる。

< 389 / 415 >

この作品をシェア

pagetop