Hurly-Burly 5 【完】

「逃げてもしょうがないと思いますよ?女は

追うより追われる方がいいとか聞きました。」

追うなんて癪だから追われるような女になるのよと

母さんの口癖みたいなものだ。

「そ、それだ!日和ちゃん、恩に着るよ。

茉莉ちゃ~ん、今そっちに行くからね!!」

徹さんが履きなれたサンダルをペタペタさせて

茉莉花さんを追いかけて行った。

「対照的な夫婦だな。」

何かでも仲良さそうだ。

「ひよちゃん、いつそんなこと覚えたのよ?」

伊織君がヘラヘラ笑うのを横目にいつだった

かなと思い浮かべて見た。

「さぁな!ところで、ほっといて良かったのかね?」

徹さんもうどこかへ去ったよ。

「ありゃ、いいんだ!いつもあんな感じだしな。」

ユウヤが鯉に餌をバラまくのを見てたら、

夏君と目が合ってにこにこ笑ってくれた。

「将来の伊織君を見てるような気がした・・・」

ジッと伊織君を見ると相変わらずダダ漏れなフェロモン

を撒き散らしていた。

「何か、賑やかなところだね。」

予想に反してすごく楽しい家族だった。

「どんなところだって思ってたんだ?」

ナル君が隣に移動してきてユウヤから

鯉の餌を分けてもらってバラまく。

「もっと、ギスギスした感じをイメージしてた。」

「言ってくれんじゃねぇーか。」

慶詩のピアスがキラキラ輝いた。

「ま、また来てもいいだろうか?」

キョトンとした顔をしたちぃ君を見つめた。

「・・・・来たいのか?」

「もちろんだ!とっても素敵な家族ではないか。」

ちぃ君の口角が微かに上がったような気がした。

「ほら、言っただろ。ちぃーは考えすぎなんだって!」

ナル君が満面の笑みを浮かべてちぃ君を見た。

「・・・・・お前の好きにすればいい。」

「じゃあ、また一緒に来て下さい!」

ちぃ君が首を縦に振ったのを見て笑った。

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