Hurly-Burly 5 【完】
自分では方向音痴なわけじゃないと解釈している。
ただ、小さい頃はよくお兄ちゃんや父さんに手を
引かれていたからその名残りなのかもしれない。
「日和ちゃん、本当にこっち?」
馨君が心配そうに首を傾げる。
「た、多分っ!」
「ヒヨリン、頼りねえ~」
ユウヤ、それを言ったらおしまいよ!
家のこと驚いてたのにこんなに広いお家がご実家
なら驚くことでもなかったんじゃないか!?
「だ、大丈夫だもん!」
廊下をパタパタ歩いていると前からイカツイ
お兄さんがゲラゲラ笑って通った。
こっちの様子に気がついたのか急にピタリと
笑い声が止まりペコリとお辞儀をした。
あたしもお辞儀をせねばとし返した。
「日和ちゃん、律儀だね。」
馨君が横でクスリと笑った。
「だ、だって、お辞儀されたもの!」
感じ悪い子だと思われたら大変じゃないか!
海に投げ落とされるのだけは勘弁して下さいだ。
「それにしても、何故みんなはいつもお辞儀とか
されるのか謎だったのだが?」
学校でも道端でもいろんな人にお辞儀されてる。
「ま、まさか、神様だったのか!?」
な、なんてことなの!
神様だったとはファンタジー小説に変更!?
だったら、あたしは何を叶えてもらうべきだろうか!
「日和ちゃん、どう見ても違うから。」
馨君が口元を押さえて笑う。
「う、嘘を付かなくても内緒にしてあげるよ?」
「違えっつうの。」
慶詩にベシッとデコピンされた。
「一応、ちーさんがお偉いちゃんだかんな~。」
「そっか、若だもんね。よっ、親びん!」
伊織君がちぃ君の肩にポンと叩く。
茶化して言ったらちぃ君がギロっと視線を向けた。
ま、魔神が降臨してるっ!
「ち、ち、ちぃ君はちぃ君だよ。偉くても何でも
そ、その分かってる人にはちゃんと分かってるはずだから・・・
お、怒らないでっ―――――!!」
ご機嫌ナナメなちぃ君は厄介極まりないので、
どうか穏便になってくれませんか?