ソウル◆チューン
黒い靄が瞬時に車に入り込む。きっとあの女には、自分の身に何が起こるか分からないままだろう。
「さて…人の女。お前には妾の人形になってもらおう。なに、命までは取りはしない。魂を奪うだけだ。代わりのモノは入れてやろうぞ。」
髪を掴んだまま、顔を直前まで近付けて謳うように囁く。愉しげな口許は弧を描いたまま。無造作に胸の辺りから女の魂を引き抜くと、口から別のモノを吹き入れた。
「可愛い妾の僕。名は蜻蛉。」
「…はい。我が主。如何様にもお使い下さいませ。」
機械的な受け答えに本人の意思は無い。
蕀は満足気に目を細めると、視線を傍らに向けた。
「源頼光に連なる血の子を産みし女よ。これが見えるか?」
蜻蛉となった女の体から細い光が傍らの魂に繋がっている。
蕀はその光をまるで実際の糸のように掴み取ると、魂を引き寄せた。
蕀に近付く事を拒むように、抵抗をみせる。
「そなたは死んだ訳では無い。肉体という器から離されただけ。」
『それはつまり、元に戻る事も可能だという事か?』
「平たくいうたらそうだな。暫くはそなたの身体を利用するわ。魂と肉体が完全に断ち切れてしまうと、妾も面白うないのでな。たまに器に戻さないといけないが、だからといって意識まで取り戻せはせぬ。死にとうなければ無駄な抵抗はせぬ事だ。」
『馬鹿な!だったら一思いに殺せ!』
「それでは面白くないというておろう。それに…先程そなたを置いて逃げた友人がどうなったか、そなたの家族がどうなるか、見届けとうないのか?」
『!!それは…っ!』
「妾と戦えるのは、そなたの子だけだ。もし妾を倒す事が出来たなら、魂も戻るように術をかけた。我が子に希望を託したくはないか?」
甘い言葉は必ずしも真実であるとは限らないが、魂に迷いが生じた。
「さて…人の女。お前には妾の人形になってもらおう。なに、命までは取りはしない。魂を奪うだけだ。代わりのモノは入れてやろうぞ。」
髪を掴んだまま、顔を直前まで近付けて謳うように囁く。愉しげな口許は弧を描いたまま。無造作に胸の辺りから女の魂を引き抜くと、口から別のモノを吹き入れた。
「可愛い妾の僕。名は蜻蛉。」
「…はい。我が主。如何様にもお使い下さいませ。」
機械的な受け答えに本人の意思は無い。
蕀は満足気に目を細めると、視線を傍らに向けた。
「源頼光に連なる血の子を産みし女よ。これが見えるか?」
蜻蛉となった女の体から細い光が傍らの魂に繋がっている。
蕀はその光をまるで実際の糸のように掴み取ると、魂を引き寄せた。
蕀に近付く事を拒むように、抵抗をみせる。
「そなたは死んだ訳では無い。肉体という器から離されただけ。」
『それはつまり、元に戻る事も可能だという事か?』
「平たくいうたらそうだな。暫くはそなたの身体を利用するわ。魂と肉体が完全に断ち切れてしまうと、妾も面白うないのでな。たまに器に戻さないといけないが、だからといって意識まで取り戻せはせぬ。死にとうなければ無駄な抵抗はせぬ事だ。」
『馬鹿な!だったら一思いに殺せ!』
「それでは面白くないというておろう。それに…先程そなたを置いて逃げた友人がどうなったか、そなたの家族がどうなるか、見届けとうないのか?」
『!!それは…っ!』
「妾と戦えるのは、そなたの子だけだ。もし妾を倒す事が出来たなら、魂も戻るように術をかけた。我が子に希望を託したくはないか?」
甘い言葉は必ずしも真実であるとは限らないが、魂に迷いが生じた。