キモチの欠片
「美味しい……」
口の中にほんのり出汁のきいたお粥の味が広がる。
普通に水だけで作ったんじゃないんだ。
あたしの為に作ってくれたんだと思うと何倍も美味しく感じる。
一人暮らしを始めてから体調を崩しても看病してくれる人はいなかった。
家族とか友達に風邪引いたぐらいで看病してなんて連絡することは出来なかったし。
「そうか、」
満足そうに微笑み、お粥をもうひとすくいして食べさせてくれる。
最近、葵が甘過ぎて胸焼けしそうだ。
こんなによくしてもらっていいのかな、と戸惑ってしまうし。
「あっ、そういえば仕事は?」
今更ながら気付いてしまった。
「あぁ…ゆずのことが気になったから一時間早く帰らせてもらった」
平然とそんなことを言われると照れくさくなる。
葵のストレートな言葉は心臓に悪い。
「ごめんね、でもわざわざ来てくれなくてもよかったのに」
なんだか申し訳ない気持ちになり、つい可愛いげのないことを言ってしまう。