キモチの欠片


「ゆず、場所はあそこでもいいか?」


会社の前の歩道を挟んだ向かいに小さな公園があり、そこを指差す。


「いいですよ」


公園か。
昔よく葵と一緒にブランコや滑り台で遊んでいたよなぁ、なんて懐かしく思っていると葵はまた眉間にシワを寄せてあたしを見る。


「敬語も止めてくれ。前々から思っていたけどマジで気持ちが悪ぃ」



葵って呼ぶのは百歩譲って承諾したけど、敬語まで止めてしまったら最後の砦みたいな感じで葵と線を引いて距離をとってたのに、それが崩れてしまう。



「それは……考えておきます」



これは譲れない。
あたしにも意地がある。



「はぁ、ゆずは相変わらず頑固だな。そんな意地張らなくてもいいだろ」


ため息と共にボソリと呟いた。

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