キモチの欠片

遠藤さんは首を左右に振る。

「いや、冗談なんかじゃないよ。実は一目惚れなんだよね。いつも受付のところで笑顔で接客したり社員に挨拶してる柚音ちゃんの姿に心惹かれたんだ。気が付けばいつも目で追っていた。だから今日は柚音ちゃんと話が出来てマジで嬉しいんだ」

子供のような無邪気な笑顔を見せる。

一目惚れって言われても正直、戸惑ってなにも答えられない。
受付っていう仕事柄、人に見られるのは仕方がないけど、好意をもって見ていたと言われたら複雑な気分だ。

自分はそんなつもりはないけど、相手はどう思っているのか分からないってことだよね。
それはちょっと怖いかも……。

遠藤さんはメタルフレームの眼鏡を右手の中指でクイッと上げる。


「そうだ、大事なことを聞くの忘れてた。柚音ちゃんて彼氏いるの?いたらショックだけどね」

肩をすくめながら言う。

ここでいると答えてしまったらいいんだろうけど、実際問題いない訳だし。

「彼氏はいませんよ」

悩んだ結果、誤魔化すのもどうかと思ったので正直に話した。
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