キモチの欠片

「ちょっとお手洗いに行ってくる」

一応、遥に一言声を掛けて席を立った。
あ……ヤバイな、頭がポワーとする。

部屋を出て少し覚束ない足取りでレストルームに向かった。

お手洗いを済ませ手を洗いながら何気なく鏡を見ると、真っ赤に染まったあたしの顔。
お酒を飲むとすぐに顔が真っ赤になるんだよなぁ。


「マズイな、これはちょっと飲みすぎたかな……」


両手で頬を押え、ポツリと声を漏らした。

遠藤さんから一目惚れだなんだと言われ、ガンガン飲むペースが上がってしまったのは否めない。
これ以上は飲まない方が賢明だな。

なんかたまにあたしを見る目が怖いんだよね。

チャンスとかやる気が出たとか言ってたけど、本気なのかな。
それだったら、ちょっと対処の仕方を考えないといけないかも。

憂鬱な気持ちでレストルームを出ると思わぬ人物がいた。


「あれ?葵……」

なぜか葵が腕を組み、壁にもたれ掛かりじっと俯いていた。

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