あたしたち別れましょ。
目の前にはあの噛み噛みな告白をしてくれた時と一緒の真剣な目をした正樹。
「正樹…かっこ良くなったね」
「は、いきなりなんだよ」
「9年前は噛んでて何言ってるのか分からない告白をしてきたのに…噛まずにかっこ良い事言うようになったね」
「…あの頃の告白なんて忘れろよ」
正樹はあの頃の告白を恥ずかしいがるけど、
「あの頃と同じくらいドキドキしたよ」
「え…」
「あの頃の噛み噛みな告白も、さっきの胸がときめくようなプロポーズもあたしには一緒。
大好きな人からの告白やプロポーズはかっこ悪くても、かっこ良くてもドキドキするんだよ」
「大好きな人…じゃあ」
正樹の目から涙が溢れる。
「正樹、幸せになろうね」
あたしはゆっくり正樹から指輪を受け取った。
「あたしから正樹に別れを告げたくせに、あたしにはやっぱり正樹が必要だよ」
別れても、頭の中は正樹のことばかり。
気づく度に正樹への気持ちを認めざる得なかった。
「美幸…」
「今度は正樹が涙が止まらないね」
何度も袖で涙を拭うけど正樹の涙は止まらない。