姫と王子が恋をする物語。
「おい、かな!いつまで寝てんだよー!」
コツン、コツン
窓ガラスに小さな石ころが投げられている音がする。
うっかり目を覚ましてしまった。
ああ、もう、うるさいなあ。
寝起きのぼーっとした意識の中で、お布団の気持ちよさだけを感じていたいの、わかるでしょ?
ぎゅっと、布団を握り締め、両足を丸めて団子状態になる。
ぬくぬくしていたいの!
だけど、窓への攻撃は、収まってくれる気配がない。
ボロボロの一軒家、ニ階の小さな部屋が、私の癒しのお城。
そのお城を攻撃してくるなんて。
許せない!
ガバっと飛び起きて、ふらつく足取りで、窓際へ歩く。
不安定な窓を、ガコガコとあけて、下を見下ろす。
ほらね、あいつがいる。
「おー」
整った顔立ち、背の高い金髪の彼は、ニカッと笑い、私に手を振った。
彼の隣にある自転車が、ボロボロのくせに、太陽の光を反射してくる。
頬を膨らまし、下にいる王子のようなイケメンを、ギっと睨んだ。
「おー、じゃない!蓮(レン)!うるさいよ、朝から!」
そう言って、ッシャっとカーテンを閉めた。
そよそよと揺れるカーテンの向こう側から、「なんだよ、人がせっかく起こしにきてやったのにさー」と、ぶつぶつと聞こえて来る。
朝は、いつも蓮が教えてくれる。
小さい頃からずっとそう。
お隣に住んでるから、お互いのことは一番よく知っていると思う。