恋の魔法に


「俺と一緒に帰りたくなかったのかなって思って」


「お、怒ってなんかないよ! 全然」



そう言って笑ってみせると結城くんもやっと笑顔を見せてくれた。


改札を抜けてホームに下り立つとこの前と同じ位置に立って電車が来るのを待った。



「またメールしてもいいですか」


「うん。いつも暇してるよ」


「テスト終わったし後は冬休みが来るのを待つだけですね」




電車に乗ってからは沈黙になることはあまりなくて結城くんが降りる駅までずっと話をしていた。


結城くんの話は面白くて聞いてて楽しかった。



「お疲れ様でした。気をつけてくださいね」



昨日と同じことを言って電車を降りていく結城くんの背中を見つめた。



『結城くんが莉子に片思い中ってこと?』


バドメンバーの言葉が頭に蘇る。


えっ、そんなことないない!
ありえないよ!


かき消すようにブンブンと頭を横に振っているこの姿は他の人から見たら変な子確定だろう。





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