雨、スズラン、少女
 
少女は次第に涙ぐみ、やがて声をあげて泣き出した。

そして、目の前に座る男に純潔を売るにいたった経緯を、洟を啜りながら話した。

男は二人の話を、通りを見るフリをして聞いていた。


 大事な人。

 大事なもの。

 守るべきもの。

 大切なもの。

 誰にでもある宝物。


それを自分は気づけていなかった。

壊そうとしていた。

やがて、男も泣いていた。

 
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