雨、スズラン、少女
 
勉強にしろ運動にしろ、一生懸命やってきた。

お陰で、人に後ろ指を指されることもなかった。

だが、異性との付き合いにおいては、手を繋いだことすらなかった。



男は少女を見ている。

男の座る窓から、喫茶店のドアノブに手を掛けたまま、厳しい表情をした少女が立っている。

少女はドアノブに掛けた白い自分の手をじっと見ながら、眉を曇らせていた。



男は椅子から体を起し、彼女を見つめる。

だが、数秒見つめたかと思うと、直ぐに腰を下ろした。

どうやら男が待つ相手ではなかったらしい。

男は自分の手のひらをじっと見つめていた。

 
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