隣の彼の恋愛事情
そんな時――。

「あの、もしかしてあなた。」

隣から、女性の声で話しかけられた。

振り向くとそこには

結子さんが私を覗き込むようにして立っていた。

「ごめんなさいね、斗馬さんの会社の方よね?受け付けで声掛けてくれた。」

にこにこしながら、暗闇でも輝くような瞳に私はみつめられていた。

「私、あっちに座ってて、一人で斗馬さん待ってるのも暇だったの。ご一緒してもいい?」

くったくなく私に話しかけられた私は、ダメとはもちろん言えず、隣の席を指差し

「どうぞ」

と言うしかなかった。

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