隣の彼の恋愛事情
たどり着いたところは、「T‘s」

土曜日のこの時間だと、きっとお店のほうで仕事をしているだろうと、チィ兄がここまで連れてきてくれた。

入口の扉をあけ、階段を下る。土曜日のお店は混雑していた。

フロアの水槽の向こうのカウンターには店長の清水さんが、シェイカーを降ってカクテルを作る姿があった。

チィ兄も何度か訪れているのか、清水さんの顔をみるとカウンターのあいている席に座り、隣に私も座らせた。

「今日、三浦は?」

私の代わりにチィ兄が聞いた。

「なんか用事があるみたいで、別の店に顔出してるみたいです。もうすぐこちらに見えるとは思うんですけど。」

そういうと、私とチィ兄に注文を聞いてくれた。

チィ兄の前にジントニック、私の前にミモザを置くと清水さんは他のお客さんのドリンクをせわしなく、でも優雅に作り始めた。
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