椿ノ華



きっと、これが最後だから。

この腕を、この唇を、この吐息を、この熱を、
体に刻む。

これから何度葵に抱かれる事になっても、
壱の事を忘れないように。

葵の時とは違う、優しく繰り返される愛撫。

酔いしれていると、ふと壱の動きが止まって。


「…壱さん…?」


視線の先を辿ると、其処に在るのは葵に抱かれた痕。


「…葵は独占欲が強いな。噛み跡にキスマーク、か」

「…ごめん、なさい」

「どうして君が謝るの?」

「だって…ぁっ」



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