椿ノ華



「…仕事に戻る。後は頼むぞ」

「…はい、葵さん」


書斎へ向かうべく歩き出した葵の背中を見送り、
着物の袖からもう一通…椿への手紙を取り出す。


「…あそこで、読もう」


椿のお気に入りのローズガーデン。

此処には、啓一郎との思い出が沢山ある。

椿はお茶をしている途中、啓一郎は散歩の途中でよく会っていたのだ。


「…綺麗…」


青い空と紅い薔薇のコントラストが綺麗で。

少し見蕩れてから、定位置のベンチに腰掛ける。



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