椿ノ華
優しく抱き留めてくれるその腕は、
やはり愛しい壱のもので。
「…ずっと、会いたかった…」
「僕も…触れられない二年間が心から辛かった」
「私もよ…」
吸い込まれる様に唇を重ねる。
「…でも、どうして?」
「啓一郎さんのお葬式、出席したから」
「…そっか、私裏方に居たから…
だから気付かなかったのね」
「僕も、君に会えるかなって期待して来たんだけど…
きっと葵の策略だろうな」
「まったく、勝てないね」と苦笑を浮かべる壱。
「でも、会えて良かった。
立派な庭だなって散歩してただけなんだけど…
まさか、君が泣いてるなんて」
指先で目元の涙を拭ってくれる。