椿ノ華



「…紫野、早いのね」

「ええ、シェフが作ってくれていたのをお持ちしただけですから」


「どうぞ」と差し出された皿を受け取ってから、


「狂い咲きって?」

「このローズガーデンを少し行った所に、桜の木があるでしょう。

ちょうど、お祖父様の住まいであった離れがある所です。

その桜が、既に咲き始めている様で」

「へえ…」


まじまじと花弁を見詰める。


「綺麗ですよ。見に行ってみてください。散ってしまう前に」

「ええ、そうするわ」


微笑み掛けてから、サンドイッチを頬張った。



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