椿ノ華
「平気よ」
紫野は、最近椿の専属執事になったばかりの青年だ。
柔らかい笑顔が壱に似ていて、何となく安心できる。
「そろそろ御昼食ですね。
此方でお召し上がりになりますか?」
「そうね…天気もいいし、そうしようかな」
「では、サンドイッチでも作って参ります」
「ええ、お願い」
再び膝の上の本に視線を戻すと、一陣の風が吹いて。
ひらりと、桜の花弁が栞の様に本に挟まった。
「…桜?」
どうして…
「狂い咲きですよ、奥様」