椿ノ華
「僕の方こそ、お礼を言いたいな」
「え?」
「君が僕と結婚する事を決めてくれた時は本当に嬉しかった。
しかも、何の迷いも無く」
「迷いなんて無いわ。
私が心から愛しているのは貴方だもの」
「成瀬川 椿になってくれて、ありがとう。
僕の最愛の奥さん」
そう言って椿の手を取り結婚指輪に口付けた壱。
「…もう、五年になるのね」
「葵が死んでから?それとも、結婚してから?」
「両方、よ」
不意に立ち上がり、
彼方から駆けてくる愛しい我が子を抱き留めた。
「かあさま!」
「おはよう。起きたのね」