椿ノ華



「うん!おきたらかあさまがいないから、びっくりした」


寂しかった、と無言で訴える様に、強く椿に抱き着く。


「葵、だからって母さんに飛びついちゃ駄目だよ。

母さんのお腹には、お前の妹が居るんだからね」


壱は葵と目線を合わせ、優しく頭を撫でた。


「おんなのこなの?」

「ええ、そうよ。今日お医者様に教えて頂いたの」

「仲良くするんだぞ、お兄ちゃん」

「うん!ぼくね、いっぱいあそぶ!なまえは?」

「…そうね…」


立ち上がって、
いつか狂い咲いて人を惑わせた、桜の木がある方を見た。



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