椿ノ華



「大きな目なんかは桜さん似だろうな。

葵は啓志と瓜二つだが」

「腹違いの兄妹でも、似ている所は似ているものですね」


会話の所々に刺々しさや皮肉があり、椿は口を噤んでしまう。

啓一郎は気にしていない様だから、
これも彼の性格なのだろうか。



…冷たい人、だな…

私には母が居たから、
貧しくても幸せだった。

だけど、彼は違うんだろうな…

幼い頃に両親を亡くして、
お祖父様にも頼れなかったのかな。

だから、お祖父様も後悔してるのかな。

豊かな暮らしをしていても、
何処か埋まらない寂しさを抱えていたのかな。



こっそりと、葵の冷徹な瞳を見詰めて、
そんな事を考えていた。



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