椿ノ華
彼はじっと椿を見詰め、やがて興味が失せた様に立ち去った。
その目には何処か、哀しみや懐かしさが感じられて。
「椿様」
「あ…はいっ」
少し離れた所に居る秘書に小走りで追い付いた。
何処かで見た様な気がする顔だと、
心の片隅で不思議に思いながら。
「此方です」
屋敷の端の方にある、重厚な扉。
秘書はノックし、
「失礼致します。椿様をお連れ致しました」
「入りなさい」
その声を合図に扉を開けた秘書は、中へ入るよう促した。