椿ノ華
紅茶に口を付けながら、ぽつりと零した言葉。
目線を其方へ向けなくても、葵が椿を見詰めているのが分かる。
「…そうかもしれないな」
素っ気ない言葉の様で、でも、
何故かいつもより優しい響きだったのは、勘違いだろうか。
「…壱が好きか」
「また壱さんのお話ですか?…そんな事言われても、
まだ好きも何もありませんよ。会ったばかりですから」
「何も思わないのか?」
「…素敵な人だとは思いますけど、それだけです」
「…そうか」
何故こんな事を聞くのかと、不思議に思っていた。