古城の姫君
 4人の女性は客室に通され、豪華な料理でもてなされました。

 その後、部屋に戻ろうとするクロークスに、カンナが後ろから声をかけました。

「リリィって誰? 知り合いなの?」

「昔ジンジャーとアプリコット城に行ったとき、知り合った人だよ」

 クロークスは、昔のこととはいえ、リリィを好きになったことはカンナに言わないでおきました。

 二人は夫婦になったものの、結婚したときからずっと友達のような関係で、いまだに子供はいません。お互い愛し合って結婚したわけではないのです。

 しかし、カンナにとって、愛してはいないものの、クロークスは夫であり、大切な人でした。

「そう」

 カンナはクロークスの過去を知って、少しのけ者になったような気持ちになりました。
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