古城の姫君
(トレニア国は……、もう負けたんだ。ここにいる意味もない……)

 スウォードは振り返り、地面に落ちた剣を拾うと、さやにおさめました。

「ベロニカ将軍。帰るぞ」

 と言って、スウォードは自分の馬に歩み寄ると、またがってたづなをつかみました。

「え? 帰るって……」
 突然帰ると言われたベロニカ将軍は、驚いてそれ以上何も言えません。

「俺はあの男に負けたんだ。だからトレニア国に帰る」

 スウォードは自分の馬を歩かせ、兵士たちに向かって

「われわれの負けだ! トレニア国に帰還する!」
 
 と大声で叫びました。

 すると、兵士たちの乗った馬がいっせいに向きを変え、クロークスたちに背を向けて走りだしました。
 3万頭の馬が砂ぼこりをあげ、走り去っていきました。
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