明日ここにいる君へ
私は手を伸ばして……
悠仁の柔らかい髪に触れる。
「…………。」
いつになく真剣な顔つきの悠仁に、梳いていた手を…ピタリと止めた。
「……らしくねーな。どうした?」
「…………。」
その手が彼に捕まり、コロンと身体が…仰向けになる。
「……悠仁?」
身体を起こした悠仁が……
じっと私を見下ろしていた。
次第に顔が近づいて。
ギシっ…とベッドが軋む。
彼の吐息が鼻先に触れた瞬間に……、
「アホ。」
鼻をギュウッと摘まれる。
それから、私の手を解放すると……ごろん側に…寝転がった。
「……少しはドキドキした?」
「さー」
「…やった。」
「…………。」
本当は。
私の鼓動の方が…激しく脈打っている。
余裕なんて微塵もない。
君と対等に渡り合う為の…精一杯の演技。
抵抗しなかったのは。
彼の全てを受け入れたいと…思ってしまったから。
「………そっちは?」
「……さあ……。」
「なんだソレ。」
「悔しいから…言わない。」
「そ。」
「……ねえ、具合はどう?」
「今ので熱上がった。」
「えっ…、ごめん。」
「嘘っ。七世って実は純粋だよなぁ。」
「ムカつくなあ…。ってか…紛らわしいよ。……どれ?」
私は悠仁の額に自分の額をぴったりとつけて、
君の熱を……計る。
「「……………。」」
「……うん、さっきよりは多分ないね。」
彼から離れると……。
「…………?!」
少しだけ…、悠仁の顔が赤くなっていた。
「……今のは天然だろ。ヤバいってそーゆーの。」
「………??」
「さすがに…ドキっとした。さっきの倍は軽く。」
「……え?」
「……もー。何なの、お前」
悠仁は急激に立ち上がると、ベッド脇のテーブルに置かれたポカリを手にとって……
それを一気に飲み干した。
「…このポカリもそうだったな。」
からっぽになったペットボトルを見つめて…
彼はぽつりと呟いた。