明日ここにいる君へ





「七世。」



「ん?」



「オマエ、それ天然なの?計算?…何とかしてくれ」



「はあ?」



「………って、今更無理か。」


「…………。」



「……案外独占欲強かったりするんだな、俺。」


しん…と、一気に部屋の中が静まる。
多分お互いに、どうしたらいいのかわからなくなっている状況…なのだと思う。


これ以上ここに居たら、色んな意味で厳しいー・・・心臓がもたない。





「えっと。ごめん、長居しちゃったね。今日はあとゆっくり休んでね。じゃ、私帰るー…」


「あ。ちょっと待って」

意を決して立ち上がったのに、言葉を待たずして悠仁が声を上げた。





彼は自分の通学用鞄を持ってくると…



「まだ時間あるなら…七世勉強熱心だしこれは絶対ハマると思う」



…とそう言って、ゴソゴソと中を漁ると、何かをテーブルに出した。

それは悠仁愛読の特装版バスケ漫画。同時に、どこぞのページから飛び出してきたのはキレイに折りたたまれた便箋のような紙。

「コレ、常盤から今日戻ってきたばっか。半年近く返って来なかったやつ」

悠仁はさり気なくその紙を手にとって、鞄にしまおうとするけれど…それを直前で躊躇した。



「…悠仁…それは?」



「今朝机に入ってた。手紙っぽいけどまだ見てない」




テーブルの前にあぐらをかいて。


彼は丁寧に折り目を戻していくと、黙々とその紙面を…見始めた。






「う〜ん…何でかねえ」

「?」

「いや、たったの一言だけ。直接聞いてくれればいいのに」

「告白?」

「いや。ライン交換したいって、それだけ」

「『それだけ』?」

私は、それだけのことが・・・悠仁に言えていない。


「隣りのクラスの子。委員会一緒で、何度も話してるんだけど」


「………。」

「誰だか気になる?聞かないの?」




「…さっきのヒントでわかったからいい。…綺麗な人だよね」

「そうねー、真面目でクールな感じの」


きっと、精一杯の勇気を出して・・・この一言を書いたのだろう。


「交換するの?」


「…いや、断るけどね。」



「………。え。」



「友達とも言えない、好きでも嫌いでもない人と交換しても会話続かないし」

「そこから親しくなる関係もあるじゃない?ネットで知り合って友人関係だって築ける時代だよ」

「世の中否定はしないし全然アリだと思うけど。ただ、俺にしたら、ナイ」


「…へぇ。案外真面目なんだ。」



「……。真面目とは違うんじゃない?表情見えない、本心見えないっていうが嫌なだけ。告白とかもそうだけど、断る時も…ちゃんと顔見て自分の気持ち伝えたいじゃん?」




「……そういうもんなの?」



「俺はね。」



あ……。



そういえば、この前ミスに告白された時も…。



例えどんな振り方であろうと、ちゃんと面と向かって話をしてたっけ。







…女はめんどくさいとか何とか……。






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