明日ここにいる君へ


空は、ぼんやり…曇り空。


月曜日――…。




私は、ゆっくりと……道を歩く。


「ナナシ」の頭の上の…グレーと同じ、空の色。




いつも早足で歩いていた学校までの道のりを――…少しだけ、ゆっくりと…進む。



すると…、どうだろう。


普段よりも…不思議と、視界が開けてくる。




暫く先を進んで、不意に――…、足を止めた。

公園のフェンスに絡まるようにして、咲いている花に…目が行ったのだ。



「………朝顔…?」


けれどそれは、
そうとも……限らない。



『雨降花だよ、それは。』


いつか、祖母が言っていた言葉が……
脳裏に浮かんでいた。





幼い頃…、

家の窓の外に咲いていた、朝顔の花……。

花をつけるその度に、数を数えては…喜んでいた、あの頃…。

水を掛けるのは、私の仕事。


近所に出掛けると、色鮮やかなそれを…見つける度に。

ワクワクと…心踊らせるものだった。



ある日の午後、祖母と出掛けた親戚の家で…朝顔を見つけた。


でも……。


よく似たそれは、『ヒルガオ』という名の花だった。



『雨降花』

おばあちゃんが…そう呼ぶから、


当然ながら、「どうして?」と…尋ねた。





今日みたいに、薄暗い…空の日だった。


おばあちゃんは、こう…言っていた。



『その花を摘むとね、雨が…降るんだよ。』





< 70 / 285 >

この作品をシェア

pagetop