鈍感ガールと偽王子
「じゃあ、ちゃんと謝れ。そういうのは時間を置くほど言いだしにくくなるんだから」
優しい口調でそう言った椎葉くんにコクリと頷くと、椎葉くんは、ポン、とあたしの頭に手をのせて、励ますようにクシャッと撫でた。
「……もー…。髪、ぐちゃぐちゃになるじゃん…」
「ハハ、わりぃ」
妙な気恥ずかしさに襲われて、俯く。
「……椎葉くん、ごめんあたし」
「ん。謝りに行くんだろ?頑張れよ」
顔を上げた先に見えた椎葉くんは、にっこりと勇気づけるような笑顔をくれた。
心が温かくなるような、そんな感覚にあたしはほっとする。
コクン、と大きく頷いて、
「ありがとう。行ってくる」
と精一杯の笑顔でそう言った。
すると何故か一瞬、椎葉くんは面食らったような顔をしたけど、
「おう」
ともう一度笑ってくれた。
優しくて、温かいその笑顔に、今度はキュンと心が鳴った。