鈍感ガールと偽王子


「あの顔にあの物腰じゃモテるにきまってるじゃない?んで、どうせ遊んでるんでしょって思われがちじゃん、そういう人って」



「うーん、まあ一般的にはそうかな」



「……でも、王子は違うの。大学入って付きあったの、たったふたりなんだよ。両手じゃ足りないほどいたって不思議じゃないのに。…しかも、ちゃんと恋人までいかないと家まで上げてもらえないんだって」



そういう誠実なところも王子って呼ばれる所以(ゆえん)らしいよ、と言った里奈を、今度はあたしが呆然とした顔で見ていた。




……いつだったか、恋愛の話になったとき。


確かに、人並みだって、言ってたけど。


正直、謙遜だと思ってた。



なのに、本当だったんだ。



好きな人と付き合ったこと無いって言ってたけど、それでもきっと、椎葉くんは彼女のことちゃんと大事にしてたんだ。




……椎葉くんらしいなあ。



「……だから、美結が椎葉くんの家に行けるのって、そういうことなんじゃないの?」



「え?」


「はじめは確かに酔ってた美結をほっとけないから家に入れただけかもしれないけど。でも、今も自分の部屋に美結がいることを椎葉くんが許してるのって、そういうことなんじゃないのかな?」


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